御嶽山でも飛べなかった陸自の長距離偵察システム

9月30日に行われた定例記者会見で、江渡聡徳防衛大臣は本サイトの質問に答える形で、今回の御嶽山噴火に際しての自衛隊災害派遣で、陸上自衛隊のヘリ型UAV(無人航空機)であるFFRS(長距離偵察システム)が使用されなかったことを認めた。

江渡防衛大臣は

「噴石から何からかなり飛んでいるような状況の中において、はたしてそれを活用することが有効になったかどうかという、そういういろいろな観点から」考慮した結果、使用されなかったと述べ、実際に使える配備状態に無いとの認識を示した。

記者会見において江渡大臣は、御嶽山噴火に際する災害派遣では、二次災害の発生を抑える最大の努力を払ったとしているが、そのような状況下であればこそ、FFRSは投入されてしかるべきであった。

定例記者会見で、御嶽山の災害派遣にFFRSが投入されなかったことを認めた江渡防衛大臣(写真:首相官邸)

定例記者会見で、御嶽山の災害派遣にFFRSが投入されなかったことを認めた江渡防衛大臣(写真:首相官邸)

 

本来FFRSは軍事に限らず、自然災害などやNBC(核・生物・化学兵器)環境下において、人命を危険に晒すこと無く偵察や状況把握を行うために開発、装備されたもののはずだ。だがFFRSと、その原型となったFFOSは先の東日本大震災でも一度も使用されることがなかったことを、軽視すべきではないだろう。

昨年4月25日に開催された衆議院予算委員会第一分科会で、徳地秀士防衛政策局長(当時)は、FFRSとFFOSが東日本大震災に際して一度も使用されなかった件について、以下のように答弁している。

「地上装置とのデータリンクというものが、万が一途絶したような場合に、直ちにエンジンを停止して降着するような構造になっておりまして、これは二次災害といったようなことを考えますと、被災地における情報収集については不向きであるというのが当時の検討結果でございました」

つまり、墜落によって二次被害が起こる可能性があると主張している。だとすれば有事おける市街地での運用も不可能となる。また今回の噴火に際しては、地上局からの有視界での操縦も可能であったはずだ。

さらに徳地防衛政策局長は。

「平成22年3月に導入されましたので、震災発生後、当時にはまだ導入1年後ということで、十分な飛行実績もないというようなこともございましたので、こちらにつきましても、二次被害防止という観点で当時は使用をしておりませんでした」

とも述べているが、今回の噴火はFFRSが導入されて以来、4年以上が経過しており充分な飛行実績がないとは考えられない。

FFRSの原型となったFFOS

FFRSの原型となったFFOS

 

防衛省のFFRSの事後の政策評価書(※)の説明では、

「(中略)~NBC(核・生物・化学)攻撃、災害派遣等の多様な事態に有効に対処できる無人偵察機」とあり、事業の目的にも、「~災害派遣等の多様な事態における適切な指揮活動を実施するためには、所要の映像情報の早期伝達が可能なシステムを保有する必要がある。無人偵察機は悪天候やNBC汚染下でも現場の詳細な情報をリアルタイムで映像にて得ることが可能である」としている。

さらに事業の達成状況に関して政策評価書は、システムの構成、偵察能力に関する性能、探知・識別能力に関する性能、標定能力に関する性能、遠隔制御に関する性能に関してこれらを達成しているとして、
「極めて有用性の高い装備である無人偵察機を装備することが可能となった」と、結論づけている。

だが東日本大震災、そして今度の御嶽山噴火でもFFRSは使用されなかった。東日本大震災の際に実用上何か問題を発見したとしても、それを改修する時間は充分にあったはずである。

FFOSの開発費は123.5億円、1セットの調達単価は45億円、FFRSの開発費は44.7億円、調達単価は37億円とされているが、他国の同種の機体と比較してもかなり高額なシステムであると言える。

少なからぬ税金を投入して開発・調達された装備が、もっとも必要とされる状況下で使用できないのでは、FFRSの実用性のみならず、国産装備全体の信頼性が疑われても仕方がないのではないだろうか。

(文:清谷信一)

(※)
http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/18/jigo/youshi/jigo08_youshi.pdf