独仏メーカーの経営統合で加速する?装甲車輌メーカーの再編

ネクスター・システムズの主力商品であるルクレール戦車

ネクスター・システムズの主力商品であるルクレール戦車

7月29日、ドイツの防衛大手メーカーであるクラウス・マッファイ・ヴェクマン(KMW)と、同じくフランスの防衛大手メーカーであるネクスター・システムズ(NEXTER SYSTEMS)が経営統合を行なうと発表した。両社は50:50のホールディング会社を設立する。この統合プロジェクトはKANT(KMW And Nexter Together)と呼ばれ、新会社がこの名称になる可能性もある。

両社が設立する新会社の売上は20億ユーロ(2,800億円)、受注残高は90億ユーロ(1兆2,600億円)、従業員は約6,000名で、装甲車輌メーカーとしてはヨーロッパで最大手となる。

この事業統合はそれぞれの国内の装甲車や関連産業にも大きな影響を与える。ドイツでは戦車の開発ではKMWが主に車体を、ラインメタルが主砲及び砲塔などを担当してきたが、KMWがネクスター・システムズと合併することによって主砲や砲塔、さらにはネットワーク・システムも、ネクスター・システムズが担当する可能性もある。

装輪装甲車「ボクサー」や装軌式の「プーマ」歩兵戦闘車など、近年のドイツの主要装甲車輌はKMWとラインメタルが合弁の目的会社をつくって共同開発してきたが、今後ラインメタルは競争力を維持するために、他国のメーカーとの提携や事業統合の模索する可能性が高い。

一方フランスでは、国内装甲車メーカーの再編が起こる可能性がある。

ネクスター・システムズと、大手装甲車輌メーカーであるRTD(ルノー・トラックディフェンス)は協力関係にあるが、同社はVGGSボルボ・グループ・ガバメントセールスの傘下にある。

VGGSはRTDの他にもフランスの名門パナール、同じくACMATなどフランスの装甲車メーカーに加え、ボルボ・ディフェンス、北米のトラックメーカーである、マック(MACK)の防衛部門マック・ディフェンス、VGGSオセアニア(旧マックディフェフェンス・オーストラリア)、などの装甲車、軍用トラックメーカーを傘下に持つ多国籍企業だが、同社が傘下に収めたパナール、ACMATなどを含めてフランス国内での事業統合は進んでいない

今回のKMWとの経営統合により、ネクスター・システムズがRTDとのアライアンスを維持する価値は低下する。もし提携が解消されるのであれば、VGGS/RTDは第三者、例えばタレスやラインメタルなどと組む可能性がでてくる。

近年ではトルコ、南アフリカなどが先進国とほぼ同等の装甲車輌を開発、製造しており、先進国メーカーの技術的な優位は相対的に下がっている。アフリカや中東、アジアなど途上国のマーケットでは中国などの追い上げがあり、さらにこれまで有力な顧客であったタイやインドネシア、ヨルダンなども自国で装甲車輌の開発、生産を行っており、先進国の装甲車輛メーカーにとって経営環境は年々厳しくなっている。このためイギリスのBAEシステムズは既に南アフリカと北米の装甲車輌メーカーを売却し、ポートフォリオを整理している。

今回のKMWとネクスター・システムズの経営統合がきっかけとなり、今後欧州や北米などの先進国の装甲車輌メーカーの再編と、それに伴う事業所や従業員の削減が起こる可能性は高いのではないだろうか(文:清谷信一)