東京防衛航空宇宙時評

キーマンに聞く 堀地徹防衛省装備政策課長(その1) 

堀地徹 防衛省装備政策課長

堀地徹 防衛省装備政策課長

 

半世紀近くに渡って、防衛装備品の輸出に関する規制となっていた「武器輸出等三原則」だが、、国際的なサプライチェーンを前提にしたF-35戦闘機を航空自衛隊に導入することなどから、民主党政権時代に見直しが開始され、現在の安倍政権ではそれをさらに進めて、「防衛装備移転三原則」に変更するに至った。

その背景には今後防衛予算の大幅な伸びが期待できず、反面装備の高性能化によって、開発・生産コストが増大して、装備調達予算の確保が難しくなってきたことがある。このため国際共同開発による開発費の低減、リスク分散、量産効果による調達コストの低減などが不可欠となり、また同時に国内調達の開発のあり方や調達方式の見直しも急務となってきた。このため本年度から、防衛省の装備調達に関連する諸機関を統合した防衛装備庁も発足する。

今回は防衛装備行政のキーマンである、防衛省経理装備局装備政策課の堀地徹課長に防衛装備移転と装備調達の今後について話を伺った。

日本政府が従来の事実上武器輸出を禁じる「武器輸出三原則等」を「防衛装備移転三原則」に変更した理由は何か。

堀地:「海外との防衛協力への取り組みが増えたために例外が多く出てきたため、民主党政権時に、例外の包括化、一般化を行った。だがこれは非常にわかりづらいし、企業側も何が許されて何が許されないかよくわからない。だからそれを更に進めて、基準とプロセスを明確化する必要があった」

「防衛装備移転三原則」への変更は国内市場の縮小に対して輸出で生産金額を増やし、一定規模の生産規模を確保するための意図があるか?

堀地「防衛装備移転三原則」への政策変更は経済的な観点からではなく、武器輸出は平和貢献・国際貢献に資する場合、安全保障に資する場合のみに限定されている。つまり政策的なメリットを重視している。ビジネスや市場を広げることが目的ではない。しかしながら結果として移転案件の増加は起こるかもしれない。いままではほぼ移転ができなかったので、共同開発のアプローチなど海外からはなかったが、これからは増加するだろう」

具体的にはどのように規制が緩和されてきたのか?

堀地:「手続きや規制の範囲が明確になった。先に述べたように以前は例外が増えすぎて、基準がよくわからなかった。また防衛装備移転の窓口となる防衛省、経産省、外務省の担当課を決め、明確にした」

輸出だとハードルが一番低いのは中古装備の輸出、あるいはライセンス品で既に原産国が生産を終わらせているが、日本では製造している装備、例えばホーク対空ミサイルのようなコンポーネントではないか。

堀地:「米国製の兵器では、昨年7月にNSC(国家安全保障会議)がペトリオットのコンポーネントの移転を認めたが、米国の同意あるいは、米国経由であることが必要だ。中古の兵器でも米国製であれば同じだ。国産装備は実質的に無償で供与ができない。またその移転の場合は基本的に我が国の安全保障や平和貢献すると判断された場合であり、輸出可能な分野は輸送、救難、警戒監視、掃海の5分野に限られている。ただし国際共同開発、国際共同生産はこの限りではない」

防衛装備の調達の効率化のために防衛装備庁が近く発足する予定だが、具体的にいつから発足するのか、また人員はどのくらいになるのか

堀地:「現在国会で関連法案が審議されているが、法案が通れば秋にでも設置を行いたいと考えている。人員は約1800名を予定している」

これは欧州主要国と較べてかなり少ないが?

堀地:「英国のDE&S、フランスのDGAなどと比べても1桁少ない。大幅に人員を増やすのは我が国の公務員制度や予算制限などから難しいだろう。アウトソーシングや、職員の能力の向上を図りながら上手くやっていくしかない。」

装備庁が発足して何が変わるのか?

堀地:「今までは内局、陸・海・空各幕僚監部、技術研究本部及び装備施設本部に分かれていた装備の開発、調達部門を統合することによる縦割りの弊害をなくすことだ。これまでは各組織が見ている正面が狭く、意思疎通が必ずしも上手くいっていなかった。防衛装備庁ではプロジェクト管理により、研究開発、取得、維持・整備といったライフサイクルを通じた一元的な管理を行い、これによって予算管理をしっかり行う。また、これまで個々のプロジェクトの個別最適化を追求する傾向が強かったが、より大きな視野から装備の研究開発、調達を行なう」

防衛省の研究開発は装備開発や技術実証などが多く、基礎研究に対する予算配分が諸外国に較べて少ないが。

堀地:「それに関してはまず、本年度装備品への適用面から着目される基礎研究へのファンドの予算を3億円と少額であるが確保した。これらは大学や民間企業の研究機関などが有する基礎技術である素材、素子、センサー、ロボットテクノロジーなど、例えばガリウムナイトライド素子など将来防衛省が使用しそうな技術に対して後押しをしていく」

現在我が国では国会で個々の装備の調達数、調達期間、総額が議論されないまま、国会が開発や調達にGOサインを出すシステムだ。これでは不明瞭でありこの状態で明確、あるいは効率的なプロジェクト管理が可能なのか。またこの状態は国際共同開発に際して障害とならないか。

堀地:「問題があることは確かだ。防衛省内では調達に関する具体的な見積もりを行っており、平成20年度からはライフ・サイクル・コスト年次報告書を出すようになっているが、諸外国に較べて説明責任が十分ではない。そこで、今後パフォーマンス、スケジュール、コストを明確化していきたいと考えている。一定以上開発費が高騰すればプロジェクトを中止するという仕組みも導入する。また全体的なポートフォリオの管理を強化するつもりである。更に、調達全体をみるアナリストの養成が必要だ。その点では中期防、大綱だけの規定では充分ではない」(次回に続く)

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